秋は梨の季節だずー
山形での二週間
「 最近、涼しくなってきたずー。」
「ずー」という語尾をつけると、山形県では「~だよね」をあらわす。
だから、標準語だと「最近、涼しくなってきたねー。」という意味だ。
この方言は、山形へ行ったときに地元の人達から、教えてもらったのだ。
先週、山形でお世話になった人たちへお礼の梨を送った。
山形で仲良くなった、おじいさんと果物が旬な季節になると、地元の名物を贈り合いしている。
夏には、旬な佐藤錦のサクランボをごっそり、いただいた。
山形へ行ったのは、今年の6月中旬。
僕は車の免許を取るために山形まで2週間、免許合宿へ行ったのだ。
仕事でマニュアルの自動車の運転免許が必要になった。
社長にはむしろ、早く行けと言われて、最短で免許を取得できる合宿免許を選ぶ。
本心は、日々の仕事に飲まれないように、自分と向き合う時間が欲しかった。
学生時代と違い、週6日間を現場で働いていると、視野が狭くなっているような気がしたのだ。
もちろん、いまでも仕事に飲まれてしまわないように、必死だ。
山形での免許合宿中に、思ってもいない出会いがあったので、そのときの気持ちを、思い返してみる。
地元のひとたちとの出会い
通っていた、合宿寮の近くに「一杯や」というモツ屋さんがある。
このお店は、まるで昭和にタイムスリップしたかのような場所。
ひとりで入れるような、雰囲気ではなかった。看板と暖簾をみただけで、地元のひとが集まっているイメージが、すぐに湧いてきた。
しかし勇気を振り絞って、一歩を踏み出してみたら素敵な出会いが待っている。
僕が席に座ると、山形弁での会話が飛び交う。
何を言っているのか、正直理解できなかった。よくわからないけど、会話中はとにかく
、うなずくことしかできなかった。
キョトン、としているところに声を掛けてくれたのが、おじいちゃんの奥山さん。
地元の名産の話をした。そのときにぼくの地元、「千葉県八街市のピーナッツの味が忘れられないんだ。」という、言葉を何度も、繰り返していたことを覚えている。
会話の8割は下ネタだった。
若い僕が、身じろぐほどの超スーパーな下ネタを連発。
けど、心から笑っていた。なぜ、下ネタは笑いを誘うのだろう(笑)
お客さん同士で、どきついツッコミとボケがあったり。
でも、いじったり、いじられたりの相手を思いやる、温かい雰囲気が好きだった。
肩の荷が下りるような、そんな時間。
日を重ねて、奥山さんには仲良くなると、「おい、ナカジマくん!」と名前で呼ばれるようになっていく。
見知らぬ土地から来た、自分の名前を呼んでもらえることが、嬉しかった。
ほかにも、一杯やで出会ったお客さんから、お酒を奢ってくれたり、心から笑えるような冗談を言い合う。
お互いのビールを注ぎ合う。目上のひとから、相手のジョッキに飲み物を注ぐ。
昔ながらのよき、日本の文化。
上下関係って、あってもいいと感じた。
合宿最終日には、地元の美味いラーメン屋、「鬼がらし」に一緒にいって、辛さを言い訳に涙が出てきた。
舌がが少しだけ、 ピリピリする唐辛子の辛さが絶妙。地元のひとたちに愛されるラーメン屋だ。
じつは社長夫婦から、二週間分の食べ物が段ボールで送られてきている。
この二週間は食べ物に、ほんとうに困らなかった。
このことを「一杯や」の女将さんに話した。
すると、「素敵な社長さんねぇ。」と言っていたことを思い出す。
僕が 働いている先の社長から、送られてきた食べ物。段ボールを開けてみて、お米がどっしり入っていたことにビックリした。
自分で選べる自由
もし、のれんや看板の雰囲気に怖気づいて、「一杯や」に入ることをしなかったら、お店の女将さんや地元のお客さんたちに、出会うことはなかった。
変化しないことを選ぶことも、自分はできる。
行動しても、しなくてもいい。
ただ、勇気を一歩踏み出して、出会ったひとたちに、今の僕は支えられていることは間違いない。
今日、この文章を書いているいま、「一ぱいや」から電話がきた。僕が送った梨をみんなで、美味しく食べたよと。
1人ひとり、電話を回してくれて、女将さんや常連のお客さんの声を聞かせてくれた。
きっと今日も、明るい山形弁で盛り上がっているのだろうか。
お世話になった、奥山さんは最後に、「この縁をつなげていきましょう。」と一言。
山形での経験は人生で、 どんなに忙しくても、つらいときでも、忘れてはいけないことを、僕に思い出させてくれる。
山形へいくときは、ぜひ「一ぱいや」寄ってみてほしい。
●店名
「一ぱいや」
●住所
https://tabelog.com/yamagata/A0601/A060101/6003241/dtlmap/