『成功ではなく、幸福について語ろう』
この本を読もうと思ったきっかけ
この本は、ユタカさんの紹介で知った。
ユタカさんと初めて出会ったのは、大学3年生の冬。新宿駅西口の路上でのことだった。
その日は、写真家が寒いなか、自分で撮った写真を路上にゴザを引いて、展示していたのだ。
確か、海外の写真を展示していたような記憶がある。
新宿の人があふれている雑踏の中、ぼくが偶然話しかけた相手がユタカさんだった。
その後、飲みに行ったり、自分が企画した読書会にも忙しいなか、30分だけ顔を出しに来てくれたりした。
そんなユタカさんは、地域包括支援センターで働いている。
地域支援包括支援センターは、各区市町村に設置されている。地域住民からの介護、虐待防止、福祉などの相談に対応する場所だ。
介護施設と地域のひとの大切なパイプ役でもあるのだ。
本を紹介してくれたユタカさんは地域包括支援センターで働くまえは、看護師として働いていた。
生と死、老いをまじかで見てきたユタカさんが紹介してくれた本。
それが、『成功ではなくて、幸福について語ろう』だ。
『成功ではなくて、幸福について語ろう』
この本の著者は岸見一郎さん。
以前、大ヒットした『嫌われる勇気』を書いたひとでもある。
オーストラリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーが作った、「アドラー心理学」をもとにカウンセラーとして、いろんな人の悩みの相談に答えているひと。
今回の本では、タイトルどおり「幸福」がテーマ。
現在の世の中では、「成功」=「幸福」として考えるひとが多い。
いや、そうじゃなくて「成功」は「幸福」になるための手段。
成功と幸福は別物。
成功と幸福を同一視しているひとは、自分の価値を何ができるかという生産性の観点からしか見ないことが多いという。
そもそも、成功って?幸福って?価値って?
ぼくたちにとっての、幸福ってなんだろう。
そんなことを考えさせられる本。
読んでみて、印象に残ったことをこれから、3つだけ書いていく。
one of themとして生きる
他者のつながりのなかで、人は生きている。
なのに、自分がほかに人に愛されることばかり考えてしまう。
友達や恋人がいたら、「あのひとは自分のために何をしてくれるんだろう?」って。
そういう人は、自分に価値があると思えるひとは少ないという。
なぜなら、自分が誰かのために役に立っているという貢献感を持てないからだ。
自分に価値を感じるためには、どうしたらいいか。
それは、ひとから与えられるだけでなくて、ひとに自分から与えていける人になること。
だれかのために、役に立っていると思えるときに人は自分に価値を感じる。
人生は設計できない?
人は「今ここ」で幸福を感じる。
なにか過去を悔やんでも、そのときにタイムスリップできるわけではない。
かといって、未来を考えれば不安になる。
じゃあ、その両方を手放しちゃえ!というのが、大事らしい。
しかし、これを本当に実践すると「人生設計」ができなくなってしまうのだ。
たとえば、自分に強烈なスポットライトが当たっているとイメージする。
すると、過去も未来も見えない。足元はとりあえず見える。
でも、明日はどうなるか分からない。
今日できることだけをやって生きていけば、気が付けばいつの間にか長生きしていたというのが人生だという。
毎日がリハーサルではなくて、本番。
今日という日を他者にいかに貢献できているかということを絶えず、振り返って今日できることをしっかりやっていくことが大切だ。
生きているだけで価値があると思えるか?
「なんか世の中って、生産性でひとの価値をきめてるんじゃないかな?」
そうつぶやいて、ユタカさんはぼくに、この本を紹介してくれた。
仕事ができることが幸福?
なにかスキルを持っていたり、肩書を持っていることが幸福なのか?
それは、本人にしかわからない。
たとえば、自分にとっての幸福が家族の笑顔をみるためだったなら。
まずは、家族と一緒にいる時間を作ってみたり、自分でご飯を手作りで作る。
本当に家族の笑顔を見たかったら、もしかしたら「一緒にいる時間」をつくることが自分にとっての本当の幸福かもしれないからだ。
それで、もっと笑顔にしたかったらお金をもっと稼ぐなり、生産性を
持てばいいし、スキルも磨けばいい。
だから、タイトルのように成功ではなくて幸福を語ること。
これが、大事なことなんだと読んで気付いたことだ。
最後に他のひとのために貢献するってなると、「何ができるのか?」という風にイメージしてしまう。
でも、本当は生きているだけで、それだけで価値があることなんだ。
流れるような日常のなかで。
忘れてしまうけど、わすれてはいけない言葉。
「生きていてくれて、ありがとう」
本とは関係ないけど、大学4年生のときに出会った書道パフォーマーが書いてくれた色紙。右上に「生まれてくれて、出逢ってくれて、今日この時まで生きてくれて、歩んでくれてありがう」と書かれている。これから、 そういう心を持って生きていきたい。