『コーダの世界』
『コーダの世界』
この本は友人から借りた本だ。
前に行なった読書会で、おすすめしてくれた本について、紹介したい。
コーダとは?
コーダというのは、耳の聞こえない親を持つ聞こえる子供たちのことだ。
聞こえないひとから生まれる子供の90%は、聞こえるコーダが生まれる。
「Chirdren Of Deaf Adults」の頭文字を取って「CODA」という造語が作られたのが、始まり。
コーダは聞こえないひとの文化である、「ろう文化」と聞こえるひとの文化の両方を経験するのだ。
「ろう者」って?
「ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である。」
(ろう文化宣言から引用)
この言葉からわかるのは、ろう者は「耳の聞こえないひと」ではなくて、日本語とは違う手話という言語を使っている言語集団ということ。
手話は聞こえないひとたちが日本語を補うために使っているコミュニケーション手段ではないのだ。
手話は日本語とは違う完全な言語。
だから、英語を学ぶ感覚に近いかもしれない。
コーダはバイリンガル?
手話ができるろう者の両親を持つコーダは、手話ができて当たり前とまわりの人から思われてしまう。
でも、手話ができないコーダもいるのだ。
たとえるなら、帰国子女だから「あいつは英語ができる」と思われるのと同じこと。
日本語が話せて、手話もできると思われてしまうのだ...
通訳として
話せるコーダは、学校の先生との面談で通訳を任されたり、親の仕事の電話連絡でも通訳として、親との間に仲介役としてはいる。
ときには、三歳のコーダが銀行のローンのことも代わりに電話で対応しなくてはならないケースもある。
「りしってなんだろう」「ローンって?」
難しいことばに出会うことで、知らない用語を覚える。そして、ほかの聞こえる生徒よりも、考えが大人なびてくるという。
常識と、マイノリティのはざまで
コーダは耳の聞こえないろう者の両親に育てられていく。
声と手話をつけて話す両親が当たり前だった世界から、学校に通い始めると両親が出していた声が聞こえている人たちとは違うと気付く。
思春期のコーダは、親が「耳が聞こえない」というハンディがあるということを知られても、笑顔でいることが多いという。
「ろう者だから」という視線が、辛いのだ。
常識と、自分の家庭がかけ離れている。そのギャップがコーダを「強くならなきゃ」と精神的に自立させているのかもしれない。
コミュニティの重要さ
聞こえる生徒の常識と、自分の育ってきた環境がじつは少数派なんだと知ったときに、劣等感を感じたり、常識とは違う言語、考えをもつ両親を受けいれることができなくなってしまうのだ。
そのときに、コーダだけで集まる場所があると、客観的に自分の置かれている環境を見れるという。
常識にはまらないといけない「こうじゃなきゃいけない」から、「こうでもいいんだ」と考えかたができるようになる。
セルフヘルプ・グループということばがある。
同じ治療を目的としたひとが集まって、相互に支えあうケアの方法だ。
学校と家庭だけでは、なくて地域のコミュニティやサークルのなかで色んな
立場のひとが集まることで、自分やその周囲のひとをより、理解できるようになる。
それは、コーダの世界でも聞こえるひとにとっても共通していること。
そんな、コミュニティをぼくは、どんどん増やしていきたい。
コーダの世界―手話の文化と声の文化 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 澁谷智子
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2009/10/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (8件) を見る