読書会
朝のカフェで
日曜の午前9時。朝っぱらから、あめにてぃカフェで読書会をひらいた。
今回おこなったのは、自分のおススメだと思う本を持ってきて紹介する、フリートーク形式の読書会。
あめにてぃカフェは神田三崎町にある、落ち着くカフェ。
あめにてぃカフのオーナーである羽田さんは、読書会に協力してくれて、仮眠してお店を空けて待ってくれていた。
羽田さんの実家は、長野県。平日は出版社とカフェの仕事をこなして、週末に実家へ帰るという多忙な2拠点生活をしている。
いつもは日曜の午前に実家に帰るという羽田さん。少し眠たそうな顔をしていた。
羽田さんについて、詳しく書いてある記事。あめにてぃカフェでは何か、心地いい雰囲気が感じられる。
読書会もやってみたいと相談すると、忙しいなかで日程を調整してくれたのだ。
ぼくが、カフェの空間をつかって何か企画したいと相談すると羽田さんはいつも、こうつぶやく。
「まずは、とりあえずやってみましょう。」
ぼくは、このことばを聞いて、こわばった肩の力がスッと抜けていく感じがした。
なぜ読書会をひらいたのか?
ぼくは、小説以外ほとんど本なんて読む人間じゃなかった。
ところが、あめにてぃカフェとの出会いから、世の中の仕組みや社会問題を知らない自分に気づいた。
あまりにも、無知だったのだ。
そのとき、いままで何でいろんなことに興味を持って、学んでこなかったんだろうって、後悔した。
知識がないことへの恥ずかしさというより、このまま何も知らずに死んだら、ぜったいに後悔するっていう確信。
だから、無知な自分を受け入れて、勉強しようと思ったのだ。
政治経済、文化、宗教、おかね、性、教育、福祉、歴史。
教科書にない学びを共有できる、機会を作ってみたかった。
ろう者と聴者のコミュニケーション
今回の読書会は、大学時代に一緒に教職で学んでいた那須(えりりん)とその友達の岡田くん。そして、カフェオーナーの羽田さんが参加した。
教職のクラスで出会った那須のことは「えりりん」と呼んでいるが、恥ずかしいのでここでは、那須と呼ぶことにする(笑)
那須は、ろう者なので音が聞こえない。
反対に耳が聞こえるひとは聴者と呼ばれる。
教職の授業のあとに、コミュニケ―ションがうまく取れなかったのがキッカケで、思い切って声を掛けた。
そのときに、手話に興味があると伝えると、那須は指文字や手話をぼくに教えてくれたのだ。
指文字表。自分の好きな音楽に合わせて、指文字を練習したこともあった。
手話を覚えるときのルール。学校の空き教室を使って、本気で教えてくれた。
そんな那須から、読者会の当日の朝に、ラインのメッセージが届いた。
「みんなの話していることが分かるように情報保障をお願いしたいんだけど、大丈夫かな?」
このことばを聞いて、みんなとコミュニケーションを取りたいという、強い意志が伝わってきた。同時に、うまく聴者とコミュニケーションが取れるように、読書会を進行しないとって、責任感をズシリと感じたのだ。
そんな僕に、那須はUDトークという、アプリを提案してくれた。
UDトークとは?
UDトークは簡単にいうと、聴覚障害のある人と会話を共有できるアプリのこと。
発言の仕方は「音声」、「手書き」、キーボードの3つ。
スマホの前で話すと、音声を自動で書き起こしてくれる。
そして、書き起こされた文章は、リアルタイムでみんなに共有されるのだ。
UDアプリのメリットはスピード感を持って、ろう者と聴者が会話できることや、音声情報を拾ってくれるところ。
しかしデメリットは、スマホとパソコン越しで会話するので、 お互いの顔がみえにくい。また、音声入力に頼って、聴者がなかなか手話を覚えにくいことが欠点。
ろう文化って?
今回の読書会では、那須の持ってきた本が皮切りに、ろう者と聴者の文化の違いがテーマになった。
どんな違いがあるのか。
たとえば、会社で何かトラブルが起こったとする。
聴者は空気を読んで、「ああ、あいつがやらかしたんだな」と暗黙の了解だと悟る。
そう、場の空気を読むというのは、聴者独自の文化なのだ。
しかし、ろう者は空気を読む文化はない。
誰が悪いのか、なにが原因なのかをハッキリことばで表す。
だから、聴者からは「言い方がストレートだね」と言われることが多いという。
このほかにも、たくさんの文化の違いがある。
ろう者と聴者とのあいだにある「ズレ」
この「ズレ」を少しでも伝えようとしたのが、『ろう者のトリセツ・聴者のトリセツ』なのだ。
お互いが歩みあう努力を
ろう者が聴者のなかで、一緒に生活するのは、まるで外国人が日本で片言の日本語で接客するような感覚だという。
ろう者の第一言語は手話。自分の気持ちや意見を自由に表現できる。
だが、社会ではろう者も、聴者とおなじように声を出すように求められるのだ。
そもそも、ろう者の文化は日本人の文化とは違うのに。
同じような日本の文化や、聴者の文化に合わせることは、民族的な迫害を連想させる。
その原因は、きっと、ろう文化を知るきっかけがないから。
機会があったとしても、自分から相手に飛び込めない。
だから本当に必要なことって、自分から相手に、歩み寄る勇気なんだと思う。
写真の左から那須、岡田くん。岡田君は海外旅行が大好きで、電子書籍のkindleで本を紹介してくれた。ふたりとも、参加してくれてほんとうにありがとう!