『茶色のシマウマ、世界を変える』
本と出会った経緯
この本は、まどかさんから紹介してもらった。
まどかさんは現在、カナダでスタジオをつくって、ダンスの先生をしている。
知り合ったのは、学生のころ。ツイッターのつぶやきに魅かれて直接、連絡を送ったのだ。
返事がきて、ストレートな感情表現。そして、心に響く言葉がほんとうに印象的だった。
そして、まどかさんは何のためにダンスをするのか探すために、世界一周をしている。
そこでぼくは、世界の教育に興味があると相談してみた。
そしたら、『茶色のシマウマ、世界を変える』という本を紹介してくれたのだった。
教育や国際について、興味がある人にぜひ、読んでほしいおススメの本。
茶色のシマウマ、世界を変える―――日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった 小林りんの物語
- 作者: 石川拓治
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ISAKをつくった女性
この本は、日本初の全寮制インターナショナル高校である、ISAKをつくった小林りんさんの物語だ。
ISAKとは、インターナショナル・オブ・スクール・アジア・軽井沢の略称。
2014年8月、長野県軽井沢町につくられた。
この高校が重視するのは、生徒の多様性。
生徒はアジア諸国を中心とした世界各国から、集まる。
しかも、できる限り多様な地域の多様な階層の子どもたちに門戸をひらくために、奨学金制度を充実させている。
つまり、この高校では日本人と外国人が一緒に学ぶ高校なのだ。
この本には、「教育を通じて世界を変えたい」という、りんさんの想いや原動力に
ついて書かれている。
茶色のシマウマ
本のタイトルにもある、「茶色のシマウマ」という言葉。
いったい、どういう意味だろう?
縦模様が茶色のシマウマがいたとして、その子は生まれ育ったシマウマの群れのなかでは自分が周りと違うことばかり意識する。
でも、居場所を探してキリン像の群れの中を転々とした結果、自分が「シマウマ」だったことを思い出す。
これは学校を設立するという、大きな目標に向かって、果敢にチャレンジする小林りんさんの生き方をたとえているのだ。
小林りんさんとは?
まるで、ジブリの映画に登場するナウシカの主人公のようなひと。
そう、書かれていた。
灰色に塗りつぶされた社会に押しつぶされることなく、みんなのためにやらなければいけないことに真っすぐ立ち向かっていく、正義感と生命観にあふれた女性。
りんさんは、中学校を受験して東京学芸大学付属高校学校に入学。
しかし、日本の学校では自分が異質であると感じて高校を中退。
海外に飛び出したけれど、留学先のカナダで多様なバックグラウンドの学生たちに揉まれながら、気づいたのは自分の「日本人としてのアイデンティティ」だった。
カナダのピアソン・カレッジ
カナダの自然に囲まれた場所に位置する国際学校。
各国から集まってくる生徒はここで、寮生活をおくる。
ピアソン・カレッジのことは、まどかさんのブログに詳しく紹介されている。まどかさんは、ダンスだけでなくて、寮生のお世話をするハウスペアレンツもしているのだ。
そこで、りんさんが感じたのは、外国などというものは、明日という日は本当に存在しないのと同じように、本当は存在しないということ。
世界にあこがれたり、留学すれば自分は変わることが出来ると思ってしまう。
ひとは「いま」しか生きることができない。
りんさんも日本にいたときは、自分はほかの日本人とは違うんだと思って、海外に留学した。
しかし、カナダにきてしまえば、生きなければならない「ここ」でしかなかったのだ。
国際化とは?
国際化という言葉をよく聞くことのでないだろうか?
りんさんは、英語でコミュニケーションができるようになること、アメリカ人やイギリス人のようになることが、国際人になることではないことに、気付いたという。
自分のアイデンティティは、日本人としてほかの国々のひとたちと付き合うことが本当の意味で外国と付き合うということ。
日本は陸続きではないので、多人種や多民族の存在を意識しないで生きていける。
りんさんは、カナダのピアソン・カレッジに留学したことで一番わかったのは、自分は日本をよく知らないということだったのだ。
教科書にない学び
りんさんはつくったISAKでの教え方は、日本にはあまりないスタイル。カナダのピアソン・カレッジのような多様性がある学校。
パレスチナ、チベット、中国、フランスなど多国籍の生徒が集まる。そして、教師が教えるのではなくて、生徒に考えさせる授業。
教師は生徒が話し合いを円滑に進められるように、ファシリテーターの役目をはたす。
また学校では、知識として既に知っているはずの真実に、本当の意味で触れることができる。
世界には、様々な人種や民族がいることは誰でも知っている。
日本の文化がそのひとつに過ぎないってことも。
けれど、それを知っていることと身をもって経験するのは、やはりまったく別のこと。
知識は暗記するものじゃなくて、考えたり、自分の意見を述べるための道具なんだ。
世界を変える
りんさんのように、教育で世界を変えるなんて無理だと思うかもしれない。
けれど、地図にある世界ではなくて、日本社会、学校社会、地域、会社のような身近な自分の世界を変えることはできると思う。
大人になってからも読書をしたり、海外にいったり、仕事に打ち込んだり。
ぼくもりんさんのように、社会の問題を他人事のように思わず、じぶんたちの問題だと
考える人間で在りたい。