『真実の瞬間 SASのサービス戦略はなぜ成功したか』
人間的成長が仕事にも、影響する
ぼくは、今日仕事をしていて、「だれのために働いているんだろう?」
とふいに疑問に感じた。
毎日を繰り返していると、たまに仕事をする目的を見失うこともある。
そんなときに、ふと去年の11月。大学4年生の秋を思い出したのだ。
ぼくは、神田のカフェでインターンをしていた。
このお店は特殊で、店長と僕だけで運営。
店長と僕の一対一の指導。3か月の間、週に3回のシフトで入った。
指導してくれた店長は、星野リゾートで働いていた経験がある。
接客の仕方やお客さんへの心遣いに対して、本当に指導が厳しかった。
一対一だと、どこにも逃げることはできない。
スポットライトが嫌でも、自分にあたるのだ。
集団にまぎれて、失敗をごまかすことなんて、できない。
大人数で働いていると、責任感が薄くなる。
たとえば、目の前で人が血を流して、倒れていたとする。
その場にいるのが、3人だけだったら自分が動かないと!ってなる。
だが、50人いるような場所に人が倒れていたら。
さらに多い、100人くらいになると「あのひと、死んだのかな?」って遠くから、眺めるだけになってしまう。
仕事も一緒で、だれかやってくれるって思ってしまうのだ。
また、接客中のミスはを探っていくと、自分の悪いクセや習慣が原因であることが多かった。
直前まで、やらなきゃいけないことを貯める、自分を過信して、同じミスを繰り返すなど。
このインターンを通して結局は、人間的成長が仕事にも、影響することを知った。
課題図書
カフェのインターンでの、テーマは「サービスの本質とは?」
簡単にいえば、そもそもサービスってなんだっけ?ということ。
「なかじまくん。サービスって何だと思う?」
店長にふいに、聞いてきた。
ふだん、よく使うサービスってさあ、なんでしょう。
........ぼくは、わからなかった。
そこで、サービスの本質を知るヒントになると、紹介してくれたのが、
『真実の瞬間 SASのサービス戦略はなぜ成功したか』という本。
『真実の瞬間 SASのサービス戦略はなぜ成功したか』
真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか
- 作者: ヤンカールソン,堤猶二
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1990/03/01
- メディア: 単行本
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スカンジナビア航空はスウェ―デンにある、有名な航空会社。
この本では、スカンジナビア航空の社長を務めていた、ヤン・カールソンの実体験が書かれている。
当時、無名だったスカンジナビア航空をヨーロッパで欠かせない航空会社にまで、成長させた企業戦略。
この本は、サービス業界のひと必読のバイブルにもなっている。
「真実の瞬間」
ヤン・カールソンは航空券販売係や、客室乗務員といった最前線の従業員の最初の15秒間の接客態度が、その航空会社全体の印象を決めてしまうという。
カールソンはその15秒間を、「真実の瞬間」と呼ぶ。
スカンジナビア航空では、一回の応接時間が平均15秒だった。
1年間にすると、何万回と、お客さんに印象を与えることになる。
カールソンはこの、「真実の瞬間」の積み重ねが重要だという。
歴史的岐路
新しい企業、賢い消費者が増えたいま、「歴史的岐路」に立っている。
たとえば、ワタミや魚民などのチェーン店を駅前でみるはずだ。
安い価格で飲み放題が付いているのは、当たり前のようになっている。
そして、いろんな名前のチェーン店の居酒屋が、ごった返しているのだ。
そうなると、競争は激しくなっていく。
お店を残すには、いままでとは違う価値を提供しなくてはならない。
また、お客さんはそれぞれ、ひとりの人間として扱われることを期待している。
じゃあ、お客さんの期待にこたえるには、企業はどうしたらいいのか?
それは、「顧客本位の企業に作り替える」ことだと、ヤン・カールソンはいう。
裁量権を与える
いちばんお客さんと接しているのは、最前線で働く、従業員だ。
お客さんの声をダイレクトに聞くことができる。
なにより、接客する15秒で会社全体の印象が決まってしまうというのだから、最前線で働く従業員は、とっても重要な立場にいる。
航空会社ではまず頭に浮かぶのは航空券係や、スチュワーデス。
もし、自分が航空券係だったとしよう。
受付に、「家に航空券を忘れてしまった!会社の打ち合わせでどうしても、間に合わせなくてはいけないんだ....!」と対応を求めるお客さんが訪ねてきたら、どうするか?
だいたいのひとは、「上のものに聞いてみます。」と答えるはずだ。
上司の許可を得られないと、その場でお客さんの要求に、応えることができない。
勝手に判断は下せないのは、当たり前のこと。
しかし、個々の従業員に裁量権が与えられていたら、問題を処理できたかもしれないのだ。
カールソンはようするに、業務を効率化するために上からの意思伝達の組織だと、
「真実の瞬間」で、お客さんを満足させることができないといっている。
結局サービスってなんだ?
後日、カフェで店長に本の感想を聞かれた。
「本、読んでみてどう思ったー?」と。
ぼくは、「いいサービスをするためには、従業員に裁量権を与えて.......~☆◆▲」
と頼りない声で答えた。
すると、店長は「わたしが伝えたかったこと、伝わってへんなぁ。この本で伝えたかったのは、シンプルに目の前のお客さんを満足させることだよ。」
お前、なに寝ぼけてんだ。経営者の視点で物申すのはまだ、早いよと。
なるほど。
店長がこの本で伝えたかったのは、ほんとうは単純なことだった。
どんな仕事でも、おなじ。
サービスでは、「真実の瞬間」を積み重ねていくことが大切なんだ。